中途入社者が選ぶ「社員の士気が高い企業ランキング」(vol.116)

仕事への熱意が低迷する日本。見習うべき企業の特徴とは


要旨:

  • 1位にボストン・コンサルティング・グループ、2位にA.T.カーニー、3位にイグニション・ポイント
  • 上位30社の「社員の士気」スコア平均は4.13点。26社が4点超ランクイン企業に共通するのは、ミッションやビジョンが浸透し、実現に向けて社員一丸となって取り組む企業文化。中途入社者のフォローや明確な評価基準など、「社員が同じ方向を向く」ための仕組みづくりも高評価のポイント
  • スピード感が早く、チャレンジできる機会が豊富で若手の成長環境としても高評価。成果に直結した報酬制度で自身の成長に集中できる点も評価される傾向に
  • 日本の「熱意ある社員」比率は最低水準。「社員の士気」スコアは企業の競争力につながる重要な指標

終身雇用制度が限界を迎え、働き手の意識も変化するなか、多くの会社員にとって「転職は当たり前」となりつつあります。昨今ではコロナ禍からの経済回復や人手不足の慢性化を背景に、2023年7~9月期平均の転職希望者数は初めて1,000万人を突破しました。まさに「大転職時代」の到来が予期されますが、「実際に転職をした人」は同期間平均で325万人にとどまります。転職に興味を持っていても、企業への応募や転職活動に動かない理由のひとつとして考えられるのが、転職後のミスマッチへの不安です。転職を考えるにあたっての懸念を尋ねる調査では、回答者の約3割が「新しい職場での人間関係の構築」や「転職先の社風が自分に合うか分からないこと」を挙げています(※)。


今回の調査レポートでは、中途入社した社員による「社員の士気」スコアでランキングを作成しました。熱意を持って働く社員の存在は一緒に働く人のモチベーションや成果にも影響し、求職者にとっても会社選びの重要な指標のひとつと言えます。外の世界も知る転職経験者が実際に働いてみて「社員の士気が高い」と実感する企業には、どのような特徴があるのでしょうか。

(※)2023年7月オープンワーク調査

TOP30上位30社の「社員の士気」スコア平均は4.13点。ランクイン企業に共通するのは、ミッションやビジョンが浸透し、実現に向けて社員一丸となって取り組む企業文化。「社員が同じ方向を向く」ための仕組みづくりも高評価のポイント。

中途入社者が「社員の士気が高い」と評価した企業を集計した本ランキング。1位ボストン・コンサルティング・グループ、2位にA.T.カーニー、3位にイグニション・ポイントが並び、トップ3社は全てコンサルティング企業という結果となりました。業種別では、ほかにIT・通信・インターネット、メーカー・商社などの企業が並びました。今回ランキング作成の対象とした、中途入社者からの投稿が15件以上ある企業1,494社の「社員の士気」スコア平均点が2.94点だったのに対し、上位30社の平均点は4.13点となり、30社のうち26社が4点超という結果になりました。

ランクイン企業で働いた中途入社者が投稿したクチコミからは、組織体制や企業文化の特徴として、ミッションやビジョンが浸透し、社員が一丸となって仕事に取り組んでいる様子が挙げられました。また、企業が求めるバリューに合致しているかどうかといった、明確な評価基準が設けられていることも特徴として見られました。上位30社の「待遇面の満足度」スコアを見ると、外資系企業で高評価な傾向が見られるものの、3点を下回る企業も5社ありました。一方、「人事評価の適正感」では全社が3点を上回りました。社員の士気が高いと評価される企業に共通するのは、年収や給与などの待遇の良さよりも、評価制度への納得感と考えられます。


加えて、中途入社者に対しても入社後のフォローが丁寧に行われていることなど、社員が同じ方向を向くための仕組みづくりが行われていることもうかがえました。ランクイン企業のなかには、士気の高い社員が集まる職場環境に惹かれて入社を決めた、といった声も寄せられており、こうした人材が新たに加わることで好循環が生まれていると考えられます。


ランクイン企業の中途入社者がOpenWorkに投稿した「社員の士気」に関する社員クチコミ

「プロフェッショナルファームとしての組織体制・企業文化が確立されている。コンサルタント職はBCGが考えるバリューの出し方に、いかに合致しているかが評価基準であり、昇進可否も極めて明快である。(コンサルティング、男性、ボストン・コンサルティング・グループ)


「『日本を変える、世界が変わる』ことを本気で目指している集団。広報上の常套句ではなく、実態として、ファーム全体が同じ方向を向いていると感じる。(アソシエイト、男性、A.T.カーニー)」


「風通しが良く、提案やプロジェクトには職位関係なくチーム一丸となって取り組む文化があり、上からも下からも学ぶことが多い。(コンサルタント、男性、イグニション・ポイント)


「産業を変革するという姿勢に共感して入社するメンバーが非常に多い。高い視座で仕事をしているメンバーと一緒に、まだスタンダードが作られていない業界の変革をリードすることの働きがいは非常に高い。多くの大企業からやりがいをベースにして参画するメンバーが多いが、フラットな評価制度で明確にインパクトを残していると正当に評価される仕組みになっている。(プロジェクトマネージャー、男性、キャディ)」


「とにかく若手にチャレンジさせようという風土がある。グループ特有の文化や価値観が存在し、自己成長だけでなく組織やチーム、顧客のためにというマインドと本気で世界のトップを目指そうと意気込んで仕事をしている。(営業職、男性、GA technologies)」


「常にお客様にベクトルが向いているため、ブレることなく高いホスピタリティを維持して働くことができる。(営業、女性、Plan・Do・See)」


「ベインの考え方・働き方に馴染むためのトレーニングやコーチングは非常に手厚く、そこには時間をかけるべきだという文化がある。ベイン流を身につけたい方にとっては良い環境となる可能性は高い。(コンサルタント、男性、ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレイテッド)」


「グーグルらしさ(Googleyness)を浸透させるためのトレーニングもあり、企業文化がしっかり根付いている。ただ仕事ができるだけではなく、どんな意見でもお互いを尊重し認め合う、必要であれば常に Happy to help の精神の持ち主だらけであることに驚いた。(テクニカルサポート、男性、グーグル)」


社員の士気が高い企業はスピード感が早く、チャレンジできる機会が豊富で若手の成長環境としても高評価。成果に直結した報酬制度で自身の成長に集中できる点も評価される傾向に。


今回ランクインした上位30社は、若手の成長環境としても高く評価された点が特徴的でした。対象データ全体の「20代成長環境」スコアの平均は3.03点なのに対し、30社の「20代成長環境」スコアは平均3.99点で、「社員の士気」に次いで平均との差がある結果となりました。ランクイン企業のクチコミには、スピード感を持って仕事に取り組めることや、幅広い事業を手掛けているため若手にも挑戦の機会が豊富であることが挙げられました。フルコミッション型の報酬制度を採用する企業では、成果を上げれば上げるほど報酬にも反映されるため、成長を目指す原動力になっていることがうかがえます。


ランクイン企業の社員がOpenWorkに投稿した若手の成長環境に関する社員クチコミ


「とにかくスピード感が早く、チャレンジできる領域が広い。自分がやった仕事で物事が目の前でぐんぐん動いている瞬間は大企業では味わえない醍醐味がある。『やろう』と言ったことがすぐに動き出し、半年が3年分ぐらいのスピードで進んでいく。周りに色々な企業から来たプロがいるので、何かやりたいときはすぐにアドバイスや知見をもらえる。(企画系、女性、キャディ)」


「結果主義。若くして役職者になることができ、非常にスピード感を持って出世を目指せる環境である。(営業、男性、TOKYO BASE)」


「『成長』というワードがピッタリな企業です。目標(=定量・定性)設定は半年後・1年後・2年後…5年後と、社員一人ひとりの『なりたい姿』から逆算し、メンターやマネージャーのアドバイスを参考に定め走りきる。そのため、思考力と自走力、そして完遂力など様々なポータブルスキルを身に着けることができる。既存事業をグロースさせながらも新規事業にダイナミックな人材投資、資本投資を連鎖的に実行しているため、上位ポストや役割が絶え間なく生まれ続けるので、若くして成果をあげ、各々が希望する機会報酬(=マネジメント・事業推進・他事業部への移動)を手にし、士気高く働くメンバーが多いことが印象的。(人事、女性、Speee)」


「自身の残した実績がそのまま報酬として返ってくるシンプルな仕組み。年功序列の企業が依然多い中で、周りのしがらみ等に左右されることなく、自身の成長にフォーカスすることができる素晴らしい環境である。入社時は20代前半であったため、厳しい環境に飛び込む時期としては妥当であった。(営業、男性、プルデンシャル生命保険)」


「社会問題に対しダイレクトに貢献できる点が大きな魅力。マーケットが伸び続けており、成長産業の中で、高度経済成長のような気分を味わうことができる。若手でも初日からチャンスがあり、不平等さが少ない。職務を通して学べること、学ばないといけないことが幅広く、視座が高い議論が多いため、成長ができる。(営業、男性、日本M&Aセンター)」


「グループ全体で多種多様な事業を行っているため、グループ内だけで最大化させることができる。全体的に協力的な雰囲気なので、部署を渡って様々な仕事を行うことも可能。また、やりたいことはチャレンジできる社風である。裁量も大きく、意思があれば自分ですべての業務に携わることができる。(メディア関連、女性、サイバーエージェント)」


日本の「熱意ある社員」比率は最低水準。「社員の士気」スコアは企業の競争力にもつながる重要な指標


米ギャラップ社の調査によると、日本の仕事への熱意や職場への愛着を示す社員の割合は5%(※)にとどまり、近年は世界最低水準が続いています。社員のモチベーションは企業の生産性や競争力に直結するだけに、社員が熱意を持って士気高く働ける職場づくりは企業経営において避けて通れない課題です。そのために、ミッションやビジョンの浸透、不公平感のない評価制度づくりなど、どの要素に注力すれば「社員の士気」を高められるか、その判断が今後ますます求められているのではないでしょうか。

(※)米ギャラップ社「グローバル職場環境調査」(2022年)

対象データ

OpenWorkに2020年以降に投稿された、中途入社者による会社評価レポート回答136,891件を対象データとして使用。

会社評価レポートの回答ページを見る ≫

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