「売り手市場」就活だった若手社員のクチコミから見る入社後ギャップとは?
要旨:
- 新入社員の入社後ギャップ1位は「仕事内容や配属について」
- 次いで「組織の特徴や社風について」、「成長環境やキャリア開発について」
景気が上向くに従い企業の採用も回復し、16卒では過去最高の就職率(※1)、17卒でも90.6%という最高水準(※2)を記録するなど、就活においてここ数年「売り手市場」が続いています。企業側は優秀な人材の争奪戦を強いられる一方、学生側は複数社の内定持ちながら就職活動を続けるなど、「学生が企業を選ぶ」学生優位の状況が今年も見込まれています。就職決定企業の志望度についても「第一志望の企業」に決定した割合が36.1%(※3)と、3人に1人が希望通りの就職を叶えているといえます。
今回Vorkers(現:OpenWork)では、2014年から2016年の「売り手市場」就活を経て入社した若手社員が感じている「入社後ギャップ」に着目しました。「希望通りの就職」は「希望通りの働きがい」に直結するのか、クチコミから見える若手社員のリアルとは?
※1 厚生労働省 平成27年度「大学等卒業予定者の就職内定状況調査」(2016年5月20日発表)
※2 厚生労働省 平成28年度「大学等卒業予定者の就職内定状況調査」(2017年3月17日発表)
※3 キャリタス就活 2017 学生モニター調査結果(2016 年 8 月発行)
新入社員の入社後ギャップ
1位は仕事内容や配属について。配属を選べない「総合職」ゆえのギャップ
新入社員の入社後ギャップは、1位が「仕事内容や配属について」の内容となりました。多くの企業が新卒採用において総合職採用を行っていることから、希望の「会社」には就職できても、希望の「仕事」ができるとは限らない、また、入社前に職務内容までは把握できていないという実態が見えます。「仕事選び」ではなく「会社選び」が強いられる現在の採用システムにおいては、配属リスクも視野に入れた企業研究と、職種ごとの仕事内容の理解が必要となってきます。
1位:仕事内容や配属について
「自分から希望を出しても配属が必ずしも希望通りとなるわけではないため、もし希望通りの配属でない場合にどうモチベーションを保つかが問題。(開発/男性/SIer、ソフト開発、システム運用)」
「希望していた部署には行けず、開発とは全くかけ離れた部署への配属となったので、妥当性うんぬんの話ではなくなった。(事務/男性/化学、石油、ガラス、セラミック)」
「どの部署で何をしているかを事前に確認しておくべき。マッチングが大切。(開発/男性/総合電機、家電、AV機器)」
「どこの部署に行くのか全く分からないので、それぞれの仕事内容や勤務体系を理解しておくべき。例えばコンシューマー営業になった場合、量販店・ショップの担当営業になった場合、土日・祝は基本出勤であり、世間通りの休みはない。(ちゃんと日数は休めるが)。(営業/男性/通信、ISP、データセンター)」
「入社理由の妥当性はあったかと思う。実際に日本の根幹を支えるシステムを多く手掛けているし、そのような大規模プロジェクトをチームで推進していくことに対するやりがいは大きい。しかし、大企業である分、配属リスクも大きいことは認識しておくべきことだと思われる。(一般社員/男性/SIer、ソフト開発、システム運用)」
2位は社風について。雰囲気や文化とのマッチングも大事
2位:組織の特徴や社風について
「入社してから不満に感じた点は特にはない。自分が希望していた環境が整っており、説明会や面接で受けた際に感じた印象と入社してからの印象に大きなギャップはなかった。ただ歴史が長く、平均年齢も高い。よって、年功序列の風土が形成されている(離職率が低く、長く働く環境ができているとも取れる)。(営業/男性/化学、石油、ガラス、セラミック)」
「給与水準、(昇給制度)や社内風土については一切調べずに入社した。仕事に対する憧れで入社したが、仕事をする環境や条件を、もっと精査するべきでした。(販促/男性/ファッション、アパレル、繊維)」
「働いている社員の声をもっときけばよかった。OB訪問等は特にやっているわけではないが、大量採用していることもあり、知り合い伝手でたどっていけば社員の方にあうことは簡単だったので、仕事の内容や社内の雰囲気についてもっといろいろな方から様子を聞いておけばよかったなと思います。(営業/男性/SIer、ソフト開発、システム運用)」
「やりたい事業だけでなく、社内の雰囲気や文化が自分と合っているかを確認するべきだと思う。人によって、合う合わないが分かれる。(セールス&販売/男性/不動産関連、住宅)」
「確かに安定はしているが、もっと業務内容や会社の雰囲気も深く質問して認識しておくべき。(窓口/女性/銀行(都市・信託・政府系)、信金)」
3位は成長環境について。自分が思い描くキャリアパスが歩める環境か
3位:成長環境やキャリア開発について
「成長を求めてこの企業に入社しようと考える人が多いと思うが、自分の求める成長が本当にこの企業で実現できるかじっくり考えたほうがいい。(開発/男性/SIer、ソフト開発、システム運用)」
「技術力の高さは申し分なく、また周りのレベルも非常に高いです。基本的に解雇という話は聞かないので安定性も十分だと思います。ただ、一年目から大きく成長することは会社のシステム的に難しいと思います。また、安定を求めてはいる人も少なくないので雰囲気ががつがつしているわけではないです。(研究開発/男性/重電、産業電気機器、プラント関連)」
「本当に何事にもチャレンジでき、日々忙しくも充実した毎日を送ることができているため、妥当だと思う。認識しておくべきことは、自分からアクションを起こさなきゃ何も教えてくれないため、受動的な姿勢では何も得られず成長できない。主体性を持って仕事に取り組むことが必要である。(研究開発/男性/自動車、自動車部品、輸送機器)」
「自身にとっては妥当であった。合わなかったと後悔して退職した知人が数名いるため、コンサルタントという職業の特性はよくよく理解した上で、自分自身でキャリアを築くという覚悟を持って入社すべき。(コンサルタント/女性/コンサルティング、シンクタンク)」
「大企業で歴史がある分、社内の平均年齢が高い。新卒入社してもキャリアアップが中々難しい。(販売職/女性/ファッション、アパレル、繊維)」
4位:ワークライフバランスや勤務時間について
「残業は多いのでプライベートは少なくなってしまう。だが若いうちから大きな仕事を任せてもらえるのでかなり成長することができるだろう。大きく個人差が出るが。(営業/男性/クレジット、信販、リース)」
「もっと色々と確認をしてから、入行すべきだった。有給休暇の消化率や産休育休からの復帰率など他社と比較して納得してから入行すればよかったと思う。(窓口/女性/銀行(都市・信託・政府系)、信金)」
「プロジェクトの状況や時期的に忙しい時もあるが、年がら年中忙しいわけではない。SEは厳しい環境と思われがちだが、それはないし、働きやすい環境です。(製造業向けSE/男性/コンピュータ、通信機器、OA機器関連)」
5位:給与や待遇、福利厚生について
「安定性もあり、年収も他業界に比べたらいいため、入社してよかったとは思う。しかし、育児や異動制度は実際には利用できるには条件がそろっていないと認められず、例外は取り扱ってもらえない。(損害ポート部/女性/生命保険、損害保険)」
「若手のうちは残業をしない限り、他の大企業と比べれば比較的給料は安い。しかし、福利厚生がしっかりしている為、衣食住に困ることはなく、生活にほとんどお金がかからない為、お金が貯まる。35歳を超えてから大卒以上はぐっと給料が高くなるため、それまではじっくりと貯金をするのがおすすめ。(営業部/男性/電力、ガス、エネルギー)」
「産休育休など福利厚生の面では女性に優しいかもしれないが、独身の女性にとっては少し厳しい面もある。(営業/女性/生命保険、損害保険)」
6位:人間関係について
「入社理由とのギャップは全くなかった。想像通り、同期・先輩・上司皆思いやりのある、優しい人ばかりである。ただし、それ故家族のような馴れ合いや付き合いが良いことが求められる風土がある為、成長意欲があり、実力主義な環境を求める人は居づらい。かつ賃金の昇級率も見合わない為ミスマッチとなるだろう。(外勤営業/女性/人材、コールセンター、業務請負)」
「ガツガツした性格の社員は少ないが、想像していた以上に体育会系であり、上下関係に従うことを強いられる。伝統的な価値観に浸り、まったりと長く勤めたい人には非常に向いているが、積極的にスキルを身につけていきたいと考える人にはぬるま湯に感じられるかも知れない。(開発/男性/鉄鋼、非鉄金属)」
「基本的に入社後も人の良さに対する印象は変わっていないが、基本的に体育会系出身の人間が多く、人は良いが、上下関係については厳しい人間が多い。(業務用事業部/男性/食品、飲料)」
7位:会社や業界の展望や景気について
「入社してから入社前とのギャップはほとんど感じることはありませんでした。ただ、アパレル業界全体が低迷しつつあるので、その点は認識して入社するべきだと思います。アパレル業界での地位が確立されていても、アパレル業界全体で今は赤字の風潮なので、人員や経費など削減されてきています。一人当たりの業務量は年々増えているように感じてます。(販売/女性/小売(百貨店・専門・CVS・量販店))」
「妥当とは言い難い。もっと企業研究しておくべきだった。金融業界は思っているよりも奥深く、様々な種類があるので興味がある人はきちんと勉強しておくべきだ。新卒採用は大事なカードなので無駄にしない方が良い。(営業/男性/証券会社、投資ファンド、投資関連)」
「入社理由の妥当性はあったと思う。しかし、自動車部品業界の将来性・世界情勢はもっと認識しておくべきだったと感じている。(設計開発/男性/自動車、自動車部品、輸送機器)」
データの集計について
データの収集方法
「Vorkers(現:OpenWork)」の会社評価レポートへの回答を通じてデータを収集しています。
会社評価レポートの回答条件は下記のとおりです。
- 社員として1年以上在籍した企業の情報であること
- 500文字以上の自由記述項目と、8つの選択項目に回答いただくこと
以下の2つのデータについても収集しています。
- 月間残業時間(実数)
- 有休取得率(実数)
対象データ
Vorkers(現:OpenWork)に投稿された会社評価レポートのうち、2014年から2016年に新卒入社した社員・元社員による「入社後ギャップ」4,521件を対象データとし、フリーコメントを集計・分類しました。一つのクチコミに複数のギャップがある場合には、それぞれの分類にカウントしています。
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