新卒社員が評価する「チームワークに優れた日系大手企業ランキング」(vol.113)

若手が成長実感を得られる企業の特徴とは?


要旨:

  • 1位に日本郵船、2位に日揮ホールディングス、3位に中外製薬がランクイン
  • 上位4社の「風通しの良さ」・「社員の相互尊重」合計スコアは10点満点中8点超え
  • TOP30企業の「風通しの良さ」・「社員の相互尊重」合計スコアの平均は7.62点
  • 業界別では「メーカー・商社」が最多11社ランクイン
  • 若手も裁量権が大きく、上司とも自由に議論する文化。社長や役職者にも名字に「さん付け」が浸透している様子
  • ボトムアップで社員の挑戦を後押しする企業風土である一方、主体性がないと埋もれるとの声も

転職・就職のための情報プラットフォーム「OpenWork」を運営するオープンワーク株式会社(所在地:東京都渋谷区、代表取締役:大澤 陽樹)は、「新卒社員が評価する『チームワークに優れた日系大手企業ランキング』」を発表しました。


学生の就職先として長らく人気を集め、日本産業の成長を支えてきた日系大手企業が岐路に立たされています。日本型の雇用慣行は新卒一括採用・終身雇用・年功序列を特徴としてきましたが、人材の流動性が高まる昨今では、これらの特徴が若手の活躍を阻む要因にもなっています。旧態依然とした体質から脱却できずにいる日系大企業は、JTC(Japanese Traditional Company)と表現されることもあります。


一方、日系大手企業には組織の硬直化といった課題があるものの、社員同士の結びつきの強さやチームでの連携を武器に、一人では成しえない大きな仕事に挑めることは醍醐味の一つではないでしょうか。今回の調査レポートでは、設立50年以上・従業員1,000人以上の日系企業を対象に、20-30代の新卒社員による会社評価レポートから「風通しの良さ」「社員の相互尊重」の合計スコアを集計。若手社員がチームワークの良さを感じながら成長実感も得られる企業の特徴を調べました。歴史ある大手企業だからこそ得られる働きがいについて、ランキング形式で紹介します。


新卒社員が評価する「チームワークに優れた日系大手企業ランキング」TOP30

TOP30企業の「風通しの良さ」・「社員の相互尊重」合計スコア平均は10点満点中7.62点!分け隔てなく自由闊達に議論を尽くす文化で若手の挑戦を後押し。

設立50年以上・従業員1,000人以上の日系企業に勤める、20-30代の新卒現職社員が「チームワークに優れている」と評価した企業を集計した本ランキング。1位に日本郵船、2位に日揮ホールディングス、3位に中外製薬という結果になりました。業界ごとに見ると、上位30社のうち「メーカー・商社」が最も多い11社を占めました。他には、「不動産・建設」「IT・通信・インターネット」業界などの企業が並びました。


ランキング上位30社の平均スコアを見てみると、以下のような結果となりました。「風通しの良さ」は5点満点中3.90点、「社員の相互尊重」は3.73点となり、合計スコアは10点満点中7.62点となりました。企業規模や資本形態を問わない全企業を対象に、同じく回答時に20-30代だった新卒現職者の評価スコアと比べると、上位30社の「風通しの良さ」・「社員の相互尊重」合計スコアは1点近い差をつけての高評価となりました。


ランクイン企業で働く新卒入社者が投稿したクチコミには、緊密な人間関係を築こうとする風潮が強いことや、結婚や出産など社員のライフイベントを大事にする「古き良き」企業の姿を特徴として挙げる声が多く見られました。このような企業文化が、単に社員同士の仲の良さにとどまらない様子も伺えます。年功序列である一方、若手にも裁量権があり、上司と部下が分け隔てなく議論を尽くし、社長や役職者にも名字に「さん付け」で呼ぶ文化を肯定的に捉える声も並びました。こうした組織風土によって若手が意見を言いやすい文化が醸成され、チャレンジや成長を促していると考えられます。「若手だから」と意見を軽んじられることのないボトムアップな社風が、「チームワークが良い」と高く評価される理由ではないでしょうか。


また、定期的に職場や職種を異動して経験を積ませるジョブローテーションによって、人材が組織内に循環することの利点も挙げられています。ジョブローテーションは必ずしも自分の意思や希望に沿うとは限らず、専門性を早く身につけたい若手には焦りがあるかもしれません。その一方、社内で人脈が広がることにより、風通しの良い職場環境が形成されている、といった声も寄せられました。


若手のうちからさまざまな仕事に挑戦できるからこそ、自ら考え、行動に移さなければならない厳しさもあります。事業規模の大きさゆえに経験できる仕事は多岐にわたる一方、上司に言われた業務をこなすだけでは埋もれてしまう、といった声も見られました。環境や機会が与えられるのを受け身の姿勢で待つのではなく、自らの意見や考えを積極的にアウトプットし、挑戦することで働きがいにもつながると言えそうです。


上位ランクイン企業の新卒入社者がOpenWorkに投稿した「組織体制・企業文化」「働きがい・成長」に関する社員クチコミ

「組織力を重視している。社員のギラギラした競争意識は全くなく、組織として成果を出すには、という意識が強い。定期的なジョブローテーションをほとんどの人が経験するため、基本的に上下関わらず聞きやすく、新しく着任した人が馴染みやすいような環境がある(総合職、女性、日本郵船)」


「風通しは非常に良く、上下関係や学閥などのしがらみはありません。海外企業とのやり取りが多いことも関係しているのか、思ったことは立場関係なく発言する事ができ、発言することを求められる(営業、女性、日揮ホールディングス)」


「組織体制については、以前は部署間でのコミュニケーションに一定のハードルが存在していたものの、最近は様々なツールを用いて、壁を取り払う取り組みがなされている。また、自己成長を重んじる文化があり、そのためのコンテンツは非常に豊富に用意されている。自己成長のためならばプライベートの時間も活用していく意思のある人であれば、全く問題なく馴染める。また、全社的にあまり悪い意味で外れ値のような人材がおらず、どの部署に行っても優秀な人材が揃っている(営業、マーケティング、一般、男性、中外製薬)」


「自由な風土ではある。新しくビジネスを作るということに対するハードルもあまり高くない。一方で仕事のノウハウは体系化されておらず、見て学ぶスタイルが一般的である。自力で成長できる人間には向いているが、自走できない人間には向かない環境だと思う(営業、男性、電通)」


「風通しが非常に良く、役職がある方に対しても『さん』づけで呼んでおり、意見が非常に言いやすい。権限委譲の文化が根付いており、若手のうちから様々なチャレンジングな業務に挑戦できる。仕事に熱心で優秀な方が多く、刺激を受けながら働くことができる(エンジニア、男性、マクニカ)」


「チャレンジを推奨し、それによる失敗は許容される風土であると思われる。過去の製品の失敗例もうまく別の製品開発に展開されており、その点は社風として認識されている。人当たりの柔らかい社員の人が多く、フロアの居心地もいい方と思われる(開発、男性、ブラザー工業)」


「若手でも手を上げれば色々な仕事に挑戦できる。また、大企業との取引も多いためCMや広告/雑誌でも取り上げられるようなシステムの提案や支援も提案ができる。当然だが、ただ待っているだけでは仕事は降ってこないため上司やキーマンに『やりたいこと』を正しくアピールできるかが楽しく仕事ができるかを大きく左右する。これができているメンバーは社内でも大きく活躍しているができていないメンバーは何年も停滞している印象(エンジニア、男性、アシスト)」


「個人の裁量に任される傾向が強く、やりがいを感じられる。自分で考え動けない人間は向いていない会社(事業開発、男性、旭化成)」


成長分野への労働移動で伝統的大手日系企業に迫られる転換。柔軟に変わり続けることが、独特な企業文化を「悪しき習慣」とせず、若手の成長や定着につなげる鍵。

今年6月に決定された、政権の重要課題や年末の予算編成に向けた基本姿勢を示す「骨太の方針」(※)では、退職金への課税制度を見直す方針が打ち出されました。勤続年数が長いほど税が優遇され、転職すると不利になる現行制度をあらため、成長分野への労働移動を円滑化する狙いがあります。伝統的な日系大手企業はこれまで、新卒一括採用した社員にさまざまな経験を積ませ長期的に育てることを強みとしていましたが、今後は社会の変化に対応した人事制度や組織運営への転換が迫られます。

(※)正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針2023」


1社で長く勤める時代ではないからこそ、社員同士の家族のような結びつきは敬遠され、割り切った人間関係を求める傾向は強くなると考えられます。実際にランクイン企業のクチコミからも、「社内イベントなどが多く和気あいあいとした雰囲気は時代の流れに反していると思う部分もある」「昔ながらの飲み会文化が残っている」といった指摘がありました。その一方で、社員の結束力の強さやジョブローテーションといった人材の育成方法など、伝統的な日系大手企業が築き上げた強みは、時代が変わっても若手の成長を促し、働きがいにも直結することが分かりました。外部環境に柔軟に対応する自社の姿を評価する声も見られました。


古き良き組織体制や企業文化を「悪しき習慣」とせず、「武器」とするためには、組織としても挑戦や変化を続けることが肝要です。企業としての競争力を高めるだめだけでなく、若手の定着といった観点でも重要なのではないでしょうか。


上位ランクイン企業の新卒入社者がOpenWorkに投稿した自社の変化に関する社員クチコミ

「海運業界全体の不況、コンテナや自動車といった主力事業の採算悪化等に伴い、コスト管理や新しい事業への投資等に真剣に目を向ける様に変化していることは感じる(管理部門、男性、日本郵船)」


「2021年に制定した2040年ビジョンに従って企業変革を進めている。90年以上の伝統を誇る企業でありながら自由闊達で、挑戦をよしとする文化がある(経営企画、男性、日揮ホールディングス)」


「もともと年功序列の考え方がかなり強かったが、近年は実力主義の考え方を取り入れつつあり、会社として変革期を迎えている印象を受ける(総合職、男性、東急不動産)」


「他の企業との比較はないが組織は大企業特有の縦割りの名残がある。大きな改変を繰り返して横のつながりも少しずつ強化されている。最近は優れた企業の買収やグローバル人材の確保に力を入れており、研究開発の一部部門は会議が英語化されるなどしている(研究開発、男性、ソニーグループ)」


対象データ

OpenWorkに投稿された、設立50年以上・従業員1,000人以上の日系企業が対象。新卒入社した20-30代の現職社員による会社評価レポート回答75,038件を集計。対象者・集計期間を限定しているため、OpenWorkの各企業ページで掲載している企業評価点とは異なる。

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働きがい研究所

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