中堅・ベテラン社員の「待遇と評価」の満足度が上昇した企業ランキング(vol.123)

相次ぐ初任給引き上げ。30代以上も納得する給与と評価制度の特徴とは?


要旨:

  • 1位は電通総研。2位にソニーセミコンダクタソリューションズ、3位にEYストラテジー・アンド・コンサルティング
  • 上位20社のうち「Sier、ソフト開発、システム運用」業界が最多の7社ランクイン
  • 共通点は、成果が反映される給与制度や公平さを保つ仕組み
  • 上司からの充実したサポートやフィードバックも納得感の高い評価の理由か
  • 数字だけにこだわらない「定性評価」も重視している傾向も


学生の「売り手市場」の傾向が強まるなか、人材確保のために新卒社員の初任給を大幅に引き上げる企業が増えています。日本労働組合総連合会の集計によると、今年の春闘を経た大卒(事務技術職)初任給は改定前と比べ、平均5.68%の上昇(1万2,301円増)(※)となりました。

新入社員など若い世代を中心に賃上げを実施する企業が目立つ一方、中堅社員や役職に就く社員の賃金はどのように変化しているのでしょうか。今回の調査レポートでは、30代・40代・50代の社員を対象に「待遇面の満足度」と「人事評価の適正感」(各5点満点)の合計スコアを集計。2019年と2023年の比較でスコアが上昇した企業をランキング化しました。その企業の特徴を紹介します。

(※)日本労働組合総連合会(連合)『2024春季生活闘争 中間まとめ』より

連合傘下の労働組合の企業側回答を集計


成果が反映される給与制度や公平さを保つ仕組み。上司からの充実したサポートやフィードバックも納得感の高い評価の理由か

30代以上の社員が、待遇面と評価制度の両面を評価した企業のスコア上昇幅を集計した本ランキング。2019年から2023年の5年間で、最もスコアが上昇したのは電通総研、2位にソニーグループで半導体部門を担うソニーセミコンダクタソリューションズ、3位にコンサルティング大手のEYストラテジー・アンド・コンサルティングという結果となりました。最もランクインしたのは「SIer、ソフト開発、システム運用」業界で、20社中7社でした。

ランクイン企業に寄せられたクチコミからは、評価のばらつきが生じないよう公平さを意識した仕組みがあることがうかがえました。上司からの丁寧なフィードバックに対する声も寄せられており、こうした取り組みが納得感のある評価につながっているのではないでしょうか。また、待遇面の満足度は、近年の業績好調を背景に、業績と連動した賞与が年収を底上げしていると考えられます。


ランクイン企業に寄せられた、評価制度の公平さに関するクチコミ

「基本給よりも賞与や手当てが多いようだ。半期毎の目標管理制度を取り入れている。難易度や評価については調整会議を開催し、部長による差異をできる限り減らそうとしている。概ね公平公正な評価が下されていると思う。(マネージャー、男性、電通総研)」
「各個人の仕事内容や担当箇所に応じてジョブグレードという位が設定され、これによって基本給や業績給が殆ど決まる。また、グレードと別に年度ごとの評価基準があり会社に貢献した人とそうでない人との間でかなりの給料の差がでる。徹底して、年齢や勤続年数のみで個人の評価が定められないようになっており、やる気と能力がある人にとっては若い年齢であっても膨大な金額が見込める。(開発設計、男性、ソニーセミコンダクタソリューションズ)」
「いわゆる年俸制で評価が高いと月の給料が上がっていく。自分次第なのでやる気があればどんどん上がっていくし、インセンティブもある。成績上位の人はそれなりに貰えるが成績下位になるとインセンティブはなし。良くも悪くも努力した人だけが報われる。しかし、上司からのサポートなども徹底しており、毎月面談などしっかりしているためじぶんの弱点を見つけ出し改善にむけて一緒になって考えてくれる。(評価制度は)決まった指標がありそれをどれだけクリアしたかで決まってくる。(コールセンター、男性、アメリカン・エキスプレス・ジャパン)」


数字だけにこだわらない「定性評価」を重視している傾向も

売上などの定量評価だけでなく、数字で表すことのできない成果に対する定性的な評価について言及する声がこの数年で目立つようになった企業もありました。日本マイクロソフトでは、「職種によって定量評価と定性評価の比率が異なる」といった声が寄せられており、成果を数字で表現することが難しい職種の特徴を踏まえ、評価方法を丁寧に設計していることがうかがえます。幅広い世代が納得する評価制度には、定量評価と定性評価の両者が機能していることが重要であると言えそうです。


ランクイン企業に寄せられた、定性評価に関するクチコミ

「定性評価、定量評価双方あり、評価制度も明確。規模が大きくなるにつれて給与設計もより良くなるように少しずつ変わってきている。(コンサルタント、女性、ジェイエイシーリクルートメント)」
「年収における変動給が定性・定量評価がそれぞれ設定されており、職種によってその比率が異なります。定量はもちろん、定性についても残したインパクト次第で100%を超える評価をもらえるので、やればやっただけ評価してもらえる感覚があります。(エンジニア、男性、日本マイクロソフト)」
「コンピテンシーの達成を重視しており、数字にこだわった評価にしていないことが特徴。業界によっては数字が出にくい場合があるが、コンピテンシーが達成できていれば昇進することは可能となる。(コンサルタント、男性、クニエ)」


対象データ

OpenWorkに投稿された、30代・40代・50代の社員による会社評価レポート84,949件(2019年は48,480件、2023年は36,469件)を集計。

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