目次
1. グローバル志向者の実態:16%の多様な願い
2. あなたはどのタイプ?グローバル志向者の3分類
3. タイプ別で見る最適なキャリア戦略と企業選びのポイント4. 「外資系」だけではない。戦略的企業選びの視点
5. まとめ:自分らしいグローバルキャリアの実現へ
1. グローバル志向者の実態:16%の多様な願い
グローバルな舞台で働きたい__と語る若手ビジネスパーソンが、キャリア相談の現場でも確実に増えてきています。私自身、これまで数百名に及ぶ方々と面談を行なってきましたが、その中でも「海外」や「国際的な環境」を視野に入れたキャリアを志向する方々とお会いする機会がここ数年で明らかに増えてきていると肌で感じています。割合としても、全体の約15〜20%ほどは「グローバル」を軸にしたキャリア像を描いており、弊社独自の調査(過去支援者8万人の面談データ)でも一定の傾向が見て取れます。
しかし、ひとくちに「グローバル志向」と言っても、その中身は千差万別です。
「今すぐ海外に行きたい」という即時的な希望を持つ人もいれば、「いつかは海外に挑戦してみたい」「語学力を活かして国内で国際的な仕事に携わりたい」と考える人もいます。
グローバル志向には、さまざまな志向性や段階があるからこそ、自分にとっての「グローバル」を具体化し、中長期的な視点で一歩一歩キャリアを築いて行くことが大切です。そしてその実現には、目指す方向に合わせた明確なキャリア戦略が必要不可欠です。
本記事では、「グローバル志向者のキャリア戦略」というテーマについて、私自身がキャリアエージェントとして多くの候補者と向き合ってきた面談の中で得た実際の声や傾向をもとに、志向の実態やタイプごとのキャリア構築のあり方について整理していきます。
2. あなたはどのタイプ?グローバル志向者の3分類
「グローバル」を軸にキャリアを考える際には、ご自身の志向を以下の3タイプに分類して捉えることで、より的確なキャリア戦略を立てやすくなります。
タイプA:【今すぐ海外で働きたい】
早期に海外での実務経験を積み、国際的な環境で成長したいと考えるタイプ。地域にこだわらず、幅広い国や文化に柔軟に挑戦する志向を持ちます。
タイプB:【将来的に海外で働きたい】
まずは日本で経験を積み、タイミングを見て海外へチャレンジしたいタイプ。語学や異文化理解など、段階的な準備を重視します。
タイプC:【外国語を活かして働きたい】
海外勤務にはこだわらず、国内で外国語を活かせる環境で働きたいタイプ。外資系や多国籍チームなど、グローバルな関わりを日常に取り入れたいと考えています。
3. タイプ別で見る最適なキャリア戦略と企業選びのポイント
ご自身の志向タイプが明確になったら、次に重要なのは、どのような環境で実現していくのかという視点です。同じ「グローバル」という思考であっても、目指すキャリアの方向性やタイミングによって、選択肢は大きく異なります。ここでは、グローバル志向の3タイプそれぞれに応じたキャリア戦略と企業選びのポイントについて整理していきます。
3.1. タイプA:【今すぐ海外で働きたい】
早期に海外での実務経験を積みたいというご志向を持つこのタイプにとっては、初期段階からグローバルな環境に身を置けるかどうかが、キャリア選択における重要な基準となります。
スピード感のある環境で挑戦したいという思いを実現するためには、海外拠点での即戦力採用や、現地責任者を担えるようなポジションが存在する企業を選択することが鍵となります。
キャリア戦略:
- 日系大手企業の海外現地法人・海外駐在ポジションを狙う
- 外資系企業での現地採用や駐在員採用を検討
企業選びのポイント:
- 海外拠点の数や展開地域(アジア、欧米、中東など)
- 海外駐在員の人数や比率、登用スピード
- 現地での裁量権や責任範囲(営業のみか、事業統括まで担えるのか)
- 海外駐在を通じた昇格・評価の仕組み
3.2. タイプB:【将来的に海外で働きたい】
将来的な海外勤務を視野に入れつつ、まずは国内での経験を土台にしたいと考えるこのタイプにとっては、「いつ・どのように海外へのチャンスが開けるのか」を見据えた設計が重要です。
段階的にグローバル業務にかかわっていくことが前提となるため、制度や育成方針がそのステップに沿って設計されている企業を選ぶことで、より現実的に海外キャリアへの移行が可能になります。
キャリア戦略:
- 海外事業部門を持つ日系企業で、国内からグローバル案件に関与
- 海外拠点展開を加速する成長企業でキャリアを積む
- 海外ジョブローテーション制度がある企業に入社
企業選びのポイント:
- 海外事業の中期経営計画への位置づけ
- ジョブローテ制度の透明性と実績(何年で何割が赴任?)
- 若手の海外登用実績やキャリアパス
3.3. タイプC:【外国語を活かして働きたい】
海外勤務にこだわらず、国内にいながら語学力を活かして働きたいと考えるこのタイプにとっては、日々の業務の中でどれだけ「国際性」が織り込まれているかが企業選びの重要なポイントです。語学を活用できる環境であるかはもちろん、異文化への理解や多様性を尊重する風土が根付いているかどうかも、考慮すべきでしょう。
キャリア戦略:
- 日本に拠点を置く外資系企業への就職
- グローバルカンパニーの海外顧客対応部署
- 英語を社内公用語とする企業やスタートアップ
企業選びのポイント:
- 業務上で英語を使う頻度(会議・資料・報告、海外拠点とのやり取り頻度など)
- 外国人社員比率、または多国籍チームの有無
- 海外拠点との連携の頻度と形式(メール、オンライン会議など)
- 異文化理解・DEI(Diversity, Equity & Inclusion)への取り組み
- 評価制度における語学力・グローバルマインドの重視度
4. 「外資系」だけではない。戦略的企業選びの視点
「グローバルに働きたい」と考えると、まず外資系企業を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、外資系だからといって、すべての職種・部門がグローバルな環境にあるとは限りません。実際には、語学も必要なく、日本市場向けのローカル組織に閉じた働き方となる場合もあります。
一方で、日系企業の中にも、海外戦略を中核に据えた事業展開を進め、若手を積極的に海外に登用している企業が数多く存在します。たとえば、新興国市場に新規拠点を設け、自ら立ち上げを担う機会を提供しているベンチャー企業や、20代のうちに複数国での駐在経験を積ませるプログラムを有する大手企業もあります。
重要なのは、「外資か日系か」というラベルで判断するのではなく、自身のグローバル志向がその企業の海外戦略や組織体制とどれほどフィットしているかを見極めることです。
例えば、企業の中期経営計画に「海外売上比率の引き上げ」が掲げられているか、どの国や地域に注力しているか、海外拠点の人事戦略においてどれほど柔軟性があるかなどを見極めることが求められます。また、企業の中にどのような海外人事機能が存在し、どのレベルで登用の意思決定が行われているか。グローバル人材育成が制度としてあるだけでなく、実際に何人が海外ポジションに抜擢されているのかといった“実行力”を見極める視点が欠かせません。制度はあっても「数年待たされる」だけの企業と、実際に登用している企業では天と地ほどの差があります。
単純に「グローバルに働けそうだから」「英語を使えそうだから」といった表層的な印象ではなく、企業の中期経営計画における海外事業の位置づけや、拠点ごとの役割、人事制度の柔軟性などを踏まえ、戦略的にキャリア選択を行うことが、グローバルキャリア実現への近道と言えるでしょう。
5. まとめ:自分らしいグローバルキャリアの実現へ
グローバルに働きたいという気持ちは、もはや一部の特別な人の専売特許ではありません。テクノロジーの進展や国境を越えたビジネスの加速により、多くの企業が「グローバル対応」を必須とするようになっています。
その中で重要なのは「自分がどのタイプのグローバル志向者なのか」を知り、それに応じたキャリア戦略を立てることです。イメージだけで外資を選ぶのではなく、自分自身が何に価値を置き、どのような環境で力を発揮できるのかを明確にすることで、より納得感のあるキャリアを築くことができます。
「語学を活かしたい」「海外の多様な価値観の中で成長したい」「新興国の発展に貢献したい」――その想いを具体化し、自分に合った企業や働き方と出会うことが、真のグローバルキャリアの第一歩です。
焦らず、けれど確実に、一歩ずつ自分の理想に近づいていきましょう。あなたの“グローバル”は、あなたにしか描けないキャリアのかたちなのです。
著者:
相馬 秀哉(そうましゅうや)
慶應義塾大学卒業後、富士通よりキャリアをスタート。エンジニアとして実務経験を積んだ後、PMとして大手鉄道会社・物流会社をカウンターパートとして、数十億以上の大規模システム構築やリプレイスを推進。ニューヨーク在籍時に培った自身の英語力も生かしオフショア開発チームのマネジメントも経験。その後、現職である株式会社アサインにヘッドハントされ参画。エージェントに転身後は、SIer・SES・コンサルティングファームなど幅広い企業様とのコネクションを活用しつつ、SIer経験者・SES・社内SE経験者など幅広い経歴の方のキャリアアップに強みを持つ。
0コメント