約7万人の社員クチコミから分析した‘社風(風通しの良さ・社員の士気)’に関するレポート(vol.3)

要旨:

  • 「風通しの良さ」、「社員の士気」ともに、ピークは入社1年目。「社員の士気」は入社3年で大きく低下し、「風通しの良さ」は緩やかに下がっていく。
  • 「風通しの良さ」、「社員の士気」ともに、業界ランキンング1位~3位を総合商社、コンサルティング、情報サービスの3業界が占める。
  • 「風通しの良さ」企業ランキングトップ10のうち、8社がIT関連企業。1位ガイアックス、2位にグーグルとアシストがランクイン。
  • 「社員の士気」企業ランキング1~3位を1位ステップ(学習塾)、2位Plan・Do・See(ウエディングプロデュース)、3位アイランド(アパレル)といったサービス系企業が占める。

“社風”とは、働く環境を取り巻く、人間関係や組織体質など様々な要素によって作られる企業特有の文化や雰囲気のことであり、明確な基準はありません。


しかし多くのビジネスパーソンにとって、“社風”に合う、合わない、は働く場を決める上で重要な判断基準となります。ゴールデンウィークが終わり、新入社員の入社による社内の慌ただしさが落ち着いたのも束の間、“5月病”といった話題が騒がれ始めるこの時期は、社内の人間関係が気になる時期ともいえるでしょう。


そこで今回、“社風”を形成する重要な要素の中から、“人的要因”につながる「風通しの良さ」と「社員の士気」という2つの指標をもとに調査を実施しました。


今回の調査レポートでは、「Vorkers(現:OpenWork)」に投稿された約7万人の社員による在籍企業の評価データから、「風通しの良さ」と「社員の士気」を対象にデータを集計、世代や業界、企業といった軸で分析、「年齢による推移」と「47業界ランキング」、「企業ランキングTOP30」としてレポートを公開しました。


“社風”に対する評価は若手社員時代に急降下

まず「風通しの良さ」、および「社員の士気」に対する評価が、年齢によってどのように変化するかを分析してみました。


“社風”に対して最も評価が高いのは、大学新卒で入社したばかりの人が多い22歳です。就活を苦労して乗り切り、晴れて入社した企業に対して大いなる期待を抱いていることが推測できます。

「風通しの良さ」と「社員の士気」のどちらも年齢を重ねていくほど評価が下がる傾向があります。目につくのは「社員の士気」の急降下です。22歳から25歳にかけて大きく落ち込んでいます。


入社早々の社員から見ると、上司、先輩たちはみな、高い意識を持って働いているように見えますが、実のところは、それほど仕事に打ち込んでいるわけでもなく、淡々とこなしているだけの人もいるという現実に早晩直面するもの。その結果が、このような急降下の要因になっているのではないでしょうか。


とはいえ、期待感いっぱいの新入社員が活き活きと希望に燃えて働くことは、それ自体、「風通しの良さ」や「社員の士気」といった“社風”にプラスの影響を与える効果があります。多額の採用コストをかけてでも新卒を採用する意義のひとつは、企業の社風に、まさにフレッシュな風を吹き込んでくれることだといえるでしょう。


経営側としては、若手社員の士気の低下を防ぎ、高い水準で維持するための施策の必要性を考えさせられるグラフになっています。


「風通しの良さ」に対する評価は、「コンサルティング、シンクタンク」業界がトップ

「風通しの良さ」に対する評価が高い業界は、「コンサルティング、シンクタンク」がトップ。次いで2位「情報サービス、リサーチ」、3位「総合商社」、4位「インターネット」と続いています。


1位の「コンサルティング、シンクタンク」業界では、若いうちから徹底的に論理的思考力を鍛えられます。重要なのはファクトやデータ、ロジックであり、上司の意見が絶対ではなく、新人も先輩・上司と遠慮なく議論を交わすことを奨励される会社が多いことが、「風通しの良さ」業界ランキング1位となった背景にあると推測されます。


続く、「情報、サービス」、「総合商社」、「インターネット」といった業界も、大企業にありがちな官僚的なところがあまりなく、社内のコミュニケーションを推進することが新たなビジネスチャンス発見につながりやすい業界であり、「風通しの良さ」のランキング上位に来たのはうなずけるところでしょう。


なお、「情報、サービス」にはリクルートグループの企業が含まれており、自由闊達な社風で知られるリクルート系列企業に対する評価が反映されているようです。


「風通しの良さ」の企業ランキングでは、インターネット関連企業が上位に。

※ランキングの評価点・クチコミ件数などは投稿によって変動するため、「Vorkers(現:OpenWork)」各企業ページで掲載している数値と異なる場合があります。


「風通しの良さ」についての評価が高い企業ランキング(全業界)を見ると、1位の「ガイアックス」や2位の「グーグル」と「アシスト」を始めとするインターネット関連企業や、リクルートグループの関連企業が上位にランクインしています。


1位の「ガイアックス」では、「非常にフラットで、風通しのいい体制。上下関係はなく、‘いい会社’にするための意見であれば、経営に反映される。」といったクチコミが投稿されています。


「社員の士気」に対する評価では、「総合商社」がトップ

「社員の士気」に対する評価では、「総合商社」がトップとなりました。総合商社では、若いうちから、社員一人ひとりに与えられる仕事の規模や権限が相対的に大きいため、社員の士気も大いに鼓舞される環境であることが推測されます。


続いて、「コンサルティング、シンクタンク」、「情報サービス、リサーチ」が上位につけています。上位3つの業界は「風通しの良さ」でも同様であり、自由にものが言える雰囲気が士気の高さにもつながっていると考えられます。


また、4位に「広告代理店、PR、SP、デザイン」が来ていますが、創造性が重視されるこの業界においては、社員一人ひとりの意識の高さが品質の鍵を握っています。


「社員の士気」の企業ランキングでは、学習塾の「ステップ」がトップ

※ランキングの評価点・クチコミ件数などは投稿によって変動するため、「Vorkers(現:OpenWork)」各企業ページで掲載している数値と異なる場合があります。


「社員の士気」について企業別ランキングを見ると、学習塾経営の「ステップ」がトップに、次いで、ウエディングのプロデュースで知られる「Plan・Do・See」が続いています。どちらも、サービス業として高品質なサービスをお客様に提供することが重要であり、「社員の士気」を高めるための経営努力が行われている結果が反映されたものでしょう。


1位の「ステップ」では「生徒アンケート等の結果で(人事評価が)決定。やればやっただけ生徒がついてくる状況になると良いスパイラルになって仕事に大きなやりがいを感じるようになる」といったクチコミが投稿されています。


「風通しの良さ」と「社員の士気」の関係を考察

「社員の士気」の業界ランキングトップ6業界は、「風通しの良さ」業界ランキングトップ10にもランクインしており、両者には相関関係があることが推測されます。


風通しの良い企業とは、端的には社内のコミュニケーションが活発な状況を意味します。上から命令されたことをただ黙ってこなすのではなく、社員がそれぞれ自分の考え・意見を出し合い、議論することが日常的に行われています。


こうした風通しの良い社風においては、社員は、自社の事業に積極的に参画しているという意識が高まっていきます。自分の考えが、事業の進め方や商品開発などに反映されることも多いからです。結果的に、やりがいを感じて仕事に取り組めるようになり、「社員の士気」が向上していくと考えられます。


一方で、「社員の士気」業界ランキング8位に入っている「理容、美容、エステティック」業界は、「風通しの良さ」業界ランキングの最下位47位となっています。また、「社員の士気」業界ランキングでは上位に位置している他のサービス業界も、「風通しの良さ」業界ランキングでは上位に入ってきません。これらのことから、店舗などの顧客接点でお客様の個別の要望に柔軟に対応できるような「裁量権」も「社員の士気」に影響する重要な要素だと考えられます。


データの集計について

データの収集方法

「Vorkers(現:OpenWork)」の会社評価レポートへの回答を通じてデータを収集しています。

会社評価レポートの回答条件は下記のとおりです。

  • 社員として1年以上在籍した企業の情報であること
  • 500文字以上の自由記述項目と、8つの評価項目に回答いただくこと

対象データ

2007年7月~2014年4月に、社員・元社員から投稿されたレポート回答(全69680件)を対象データとしています。

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