5000人の社員の声から見る『テレワーク』レポート(vol.72)

7割以上はポジティブ評価。増えるテレワークの課題点は?


要旨:

  • 過去3年間で、テレワーク関連クチコミは増加
  • 業種別では「IT・通信・インターネット」(33.3%)と「メーカー・商社」(31.8%)が多い
  • 7割以上(約75%)がテレワークに対しポジティブな評価
  • テレワーク積極活用企業の多くが「成果主義」
  • 課題として「利用の難しさ」「オン/オフの切り替えの難しさ」を挙げる声が見られた

新型コロナウィルス感染拡大防止、政府による緊急事態宣言で多くの企業が半ば強制的にテレワークの導入を余儀なくされました。スムーズにテレワーク移行が出来た企業もある一方、インフラ整備やペーパーベースの業務フロー等による課題が見えた企業も多く、長期化が予想される「withコロナ期」に向けた対応検討が急務となっています。また、コロナ禍のテレワークによって顕在化した問題点が、日本の今後の働き方を大きく変えていくことは明らかです。


今回の調査レポートでは、OpenWorkに集まった「テレワーク」に関する社員クチコミを集計しました。社員5000人の声から見える「テレワーク」の実態と課題とは?


「テレワーク」関連クチコミは年々増加

テレワークをはじめ、在宅勤務やワークフロムホーム、といった「テレワーク」関連クチコミは直近3年間で徐々に増えています。業種別に見ると、「IT・通信・インターネット」で特に顕著に増えていることがわかります。

業種別では3割がIT企業

業種別の割合を見ると、約3割が「IT・通信・インターネット」という結果になりました。ビデオ会議ツール等、ITインフラはテレワークにおける必須環境でもあることから、それらを提供する企業が積極的にテレワークを取り入れていることがうかがえます。

7割以上の声がテレワークに対してポジティブな評価

テレワークに関する社員クチコミは、7割以上が制度や活用に対してポジティブな声が見られました。積極的に活用している企業例や、テレワークに関する課題について、以下にまとめました。

テレワーク積極活用企業の声

テレワーク関連の社員クチコミが多く、積極的に活用している企業の多くは、フレックスタイム等の働き方施策と併せてテレワークを取り入れているようです。また、元々テレワークが活用されていた企業では、コロナ禍での対応もスピーディーであったことが一部社員クチコミから見られました。


なお、テレワークに伴う評価方法として「成果主義」に関する声が多く、自由な働き方を実現しながら会社を成長させるには、社員一人ひとりのセルフマネジメントはもちろんのこと、組織として成果を適正に評価する仕組みが必要不可欠であるようです。


「ワークライフバランスはとても良い環境だと思います。有給を取得すること、フレックスタイムでの勤務、在宅勤務など、積極的に利用していこうとする管理職の雰囲気もあって、役職関わらずさまざまな形での働き方が叶う環境かと思います。ただ、当然ですが働き方が自由になる分、成果物や個々が持ち合わせているスキルを重視される傾向があるかと思います。(事務、女性、ソフトバンク)」


「どこでもオフィスという自宅やカフェなどで働くことができる制度もある。今現在新型コロナウイルス感染症が広がっているが、いち早く在宅勤務などのガイドラインをつくり、実行に移していた。(マーケティング、男性、ヤフー)」


「ワークライフバランスはとても良い環境だと思います。「日本有数のワークライフバランスが取れる会社であるように思う。在宅勤務は普通に当たり前、年休も自由に取得できる上、取得してないと逆に注意されるので、計画的に消化しなければならない。コロナウイルスの蔓延の時には、早期から原則在宅勤務、出勤率を一定以下に抑えるよう指示がトップダウンで下り、止むを得ず出勤する場合で満員電車が怖い等の理由があれば、一時的な車通勤も認められる(ガソリン代も出る)という制度は良いとおもう。(研究開発、男性、パナソニック)」


「休暇も取りやすい。裁量勤務制度なので、自分でスケジュールを調整することで、プライベートとの両立は可能。また、必ずしもオフィスに出勤する必要もなく、効率を考えて在宅勤務も可能なので、ワーク・ライフ・バランスは非常によい。その分、成果主義が徹底されており、達成率などの視点で昇進・昇給・報酬が決められる。(技術営業、男性、日本アイ・ビー・エム)」


「3年目以降の一般社員であれば原則全員、テレワークやフレックス制度を利用できるようになった。 テレワークに関しては、自分のオフィス以外の各事務所にテレワーク用スペースが整備されているほか、提携しているコワーキングスペースもあり、関東であれば数十ヶ所くらい使える。部署や上司にもよるかもしれないが、テレワークは浸透してきている印象で、例えば各事務所のテレワーク用スペースはいつも込み合っている。(新規事業開発、男性、富士通)」


「業績達成と進捗報告が必須であること前提に、時間管理や仕事の優先順位付けは、基本的に個人に委任されており、プライベートと仕事のバランスはとりやすい(調整しやすい)職場であると感じています。また、テレワークを支える環境整備(ペーパーレス、web会議、モバイル、通信環境)も充実しており、どこでも働く環境が整備されている点も、進んでいます。(営業、男性、日本マイクロソフト)」


「部門にもよるがコーポレート系の部門では個人で進める仕事も多いため休暇を調整しやすい環境にあると思う。テレワーク(在宅勤務)なども整備されているため、家庭の事情に応じてフレキシブルに在宅勤務等ができる環境にあるため、非常に働きやすい。その分どういった成果を出すかで評価される。評価制度もいい成果を出せばすぐに昇格・昇級するので若手にとっては非常にいい環境にあると思う。(法務、男性、武田薬品工業)」


「(プライベートとの調整は)能力があり、成果を出していれば十分に可能。マネージャー陣のなかには、子育てと仕事を両立している者が男女問わず数多くいる。テレワークと成果主義が徹底している分、むしろ日系事業会社よりもライフワークバランスはとりやすいかも。もちろん前提として、実力があってこそだが。(コンサルタント、男性、デロイトトーマツコンサルティング)」

※テレワーク関連クチコミが多く投稿されている企業をピックアップしています。


社員クチコミから見える、テレワークの課題

積極的にテレワークを活用する企業がある一方で、活用に課題を抱える企業も少なくありません。様々な声がある中で、①利用が難しい、②オン/オフの切り替えが難しい、という大きく2つの課題が見られました。組織がテレワークを活用するためには、不平等にならない利用促進、適正な利用管理も重要なポイントと言えそうです。


①利用が難しい

テレワークを利用しにくい理由として、利用にあたっての申請の煩雑さや、上司の理解、部署による差によって、制度はあるにもかかわらず活用に至っていない声が見られました。


「会社の制度としては、完全フレックスタイム制、リモートワークなど、ワークライフバランスのための施策が整っている。しかし、実際に利用出来るかは、部署や上司の性格によって異なる。残業して遅くまで働くことを是とする考え方もまだ根強く残っており、長時間労働が常態化している部署もある。(コンピュータ、通信機器、OA機器関連)」


「モバイルパソコン付与や在宅勤務制度も開始されたが、上が利用しないので結局ほとんど活用されていない。(不動産関連、住宅)」


「会社(グループ)全体では、在宅勤務を始めとする働き方改革を進めているが、細かい運用ルールは各部門の裁量で決まるとされている。自分の所属部門で認められない限りは、制度利用できないのは非常に残念である。(コンサルティング、シンクタンク)」


「最近、在宅勤務制度の改定がされ利用対象者が拡大されたものの、様々な制約(制度利用には紙面での事前申請が必要、就業時間は定時時間勤務のみ、場所は自宅のみ、等)があり実用的ではない。また、周囲の理解もなく使いづらい。(総合電機、家電、AV機器)」


②オン/オフの切り替えが難しい

テレワークによって「いつでもどこでも」働けるようになり、業務調整がままならずに自宅で長時間労働を行ってしまうケースも見られました。


「事業としてクラウドを売りにしているが、在宅勤務が許可されたのは昨年と遅れている。時間外労働はかなり厳しく管理されているが、業務端末が支給されており、そこからクラウドで仕事ができてしまうため、実際はサービス残業も散見される。(SIer、ソフト開発、システム運用)」


「リモートワークを取り入れ始め、週1日程度は自宅等でも作業ができるようノートPCが配布されるようになった。その結果、場所や時間を問わず深夜や休日でも仕事をせざるを得ない状況になってしまっている部署もあり、働き方改革が悪い方に作用している面もある。(SIer、ソフト開発、システム運用)」


「テレワーク制度を積極的に進めている事もあり、勤務の個人裁量の範囲が大きい。 その分、業務量の調整を個人で管理できないと仕事に追われ続ける事になってしまう。 過重労働が問題視される社会傾向もあって会社としての取り組みも進んでいるが、絶対的な仕事量とエンジニアとのバランスが悪く、長時間残業者の数は減っていない。(SIer、ソフト開発、システム運用)」


「在宅勤務が充実しているので会社にしがみつかなくても良く早く帰ることに抵抗はない。ただ裏返すといつでも仕事できるがゆえに際限なく仕事に追われることもあり繁忙期は疲弊する。(通信、ISP、データセンター)」


データの集計について

データの収集方法

OpenWork」の会社評価レポートへの回答を通じてデータを収集しています。

  • 社員として1年以上在籍した企業の情報であること
  • 500文字以上の自由記述項目と、8つの選択項目に回答いただくこと
  • 月間残業時間(実数)、有休消化率(実数)についても収集

対象データ(集計期間:2017年1月~2020年4月)

OpenWork「ワーク・ライフ・バランス」項目に投稿された、テレワークに関する会社評価レポート5117件を対象データとしています。

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