現職社員による「会社を辞めない」理由レポート(vol.136)

まだ辞めていないけど、葛藤中。年収別の「辞めない理由」も分析


要旨:
・今の会社を辞めない理由も、退職を検討する理由も、1位は「給与・待遇面」
・「給与・待遇面」を理由に今の会社を辞めないと回答した層は、「年収800〜1199万円」グループが最多
・「年収400〜799万円」グループでは「給与・待遇面」よりも「ワークライフバランス」を理由に今の会社を辞めないと回答した層が若干多い結果・ 現職社員は待遇への不満・経営への不安を上げる声、退職済社員は会社制度や人間関係への不信の声が表出
・自社の「退職検討理由」に目を向け、辞めない理由を増やす努力をしていくことが、社員定着の鍵か


終身雇用制度が終焉を迎えつつある現在、転職活動は身近な選択肢となり「会社を辞める」ことはもはや特別なことではありません。最近では退職代行サービスや、職場環境は良好でも成長環境がない、いわゆる「ゆるブラック企業」の若手離職が話題になるなど、退職を決意した人に関するニュースは働く多くの人々にとって身近な関心事と言えるでしょう。一方で、退職を検討しながらも踏みとどまる理由にはどのようなものがあるのでしょうか。

今回の調査レポートでは、「今の会社を辞めない理由」に関するユーザーアンケート結果を用いて、現職で働き続けている人たちのリアルな声を多角的に分析していきます。また、OpenWorkに投稿された「退職検討理由」項目のクチコミの頻出単語を、現職社員と退職済社員それぞれ分けてワードクラウドで可視化、両者の違いを見ていきます。


今の会社を辞めない理由も、退職を検討する理由も「給与・待遇面」が1位

「個人」のキャリア情報をオープンにするコミュニティサービス「OpenWorkキャリア」のユーザーに対し、今の会社を辞めない一番の理由をアンケート形式で調査しました。最多は「給与・待遇面」、続いて、「ワークライフバランス」、「人間関係・社風」という結果になりました。回答者を年収別で見た際、年収800〜1199万円のグループが「給与・待遇面」を一番の理由としてあげる比率が41%と高く、年収400〜799万円のグループでは「給与・待遇面」よりも「ワークライフバランス」の良さが若干上回る結果となりました。

OpenWorkキャリアに投稿された、「今の会社を辞めない一番の理由」

(給与・待遇面に投票)「役職が付いてない職位でも同年代の上位10%程度の収入があり、不当な残業も無い。チームのビジネスモデルや働き方に疑問があれば社内異動すれば解決するケースも多く、特段転職をする理由が無い。(30代男性、年収970万円)」
(ワークライフバランスに投票)「時間休・有休・リモートが取り放題(当日申請でもOK)だから。子育て中なので、学校関係(行事・面談・PTA)・各種送迎・病気・配偶者出張等の対応をしながらフルタイムで働くには、今はこの環境でないと無理。(40代女性、年収500万円)」

以下のデータは、現職社員がOpenWorkに投稿した「退職検討理由」のクチコミ投稿内容を理由別で分類したものです。現職社員が考える「退職検討理由」でも「給与・待遇面」に関する内容が一番多く投稿されていることがわかりました。

働く人々にとって給与・待遇は、今の会社を辞めない理由にもなり、退職を見据える理由にもなる、極めて重要な要素であることがうかがえます。


「退職検討理由」項目の頻出単語を比較分析

2022年以降にOpenWorkの「退職検討理由」欄に投稿されたクチコミの頻出単語を現職社員・退職済社員それぞれワードクラウドで可視化しました。頻出回数が多いほど、大きい文字で表現されます。(色は視認性向上のためのものです)

現職社員は、待遇面の不満・会社経営への不安が表出

現職社員のワードクラウドでは給料の低さや成果を上げても変わらない等の待遇に関する不満が散見されました。退職済社員のワードクラウドでも「低い給料」に関する単語は登場したものの、具体的な不満内容は現職社員の方が多く挙げている様子です。一方で、「他の企業と比べ恵まれている」や「仕事量の少なさ」といった単語も登場し、現職に踏みとどまっている様子も垣間見られました。


退職済社員は、会社組織や人間関係への不信が表出

退職済社員のワードクラウドでは、「弱い人間が切り捨て(られる)」「尊敬できる同僚がいない」「決断力のない上司」「経験しなくてよい仕事」「監視体制」といった、会社組織・人間関係に対する不信感をあげる声が目立ちました。また、「AIの発展で厳しい業界(になる)」「他社の条件が良い」と、退職を決断するに足る理由を持って離職した様子もうかがえました。


OpenWork「退職検討理由」に投稿された、現職社員の「不満・不安」

「給与がとにかく低いため。また、新卒の給料は年々上がっているのに対し、ベースアップがないため新卒と給料があまり変わらない点も不満。(エンジニア、現職、システム開発)」
「ベンチャー企業で働く上で覚悟していなければいけないことだとは思いますが、やはり給与面など将来への不安が消えないことが一番の理由でした。(研究職、現職、繊維)」
「業務量に見合った給料ではないと感じている。いつまで経っても変わらない社風、いくら変えていこうとしても経営側の意識が変わっていないように見受けられる。(特定職、現職、銀行)」


OpenWork「退職検討理由」に投稿された、退職済社員の「不信」

「明らかに人を大事にしていない。会社の財務状況も赤字で、人件費を真っ先に削るために中途から新卒にシフト、中途は辞めて欲しい雰囲気が出てきたので退職。(営業、退職済み、人材サービス)」


まとめ  〜退職検討理由から考える、社員定着のヒント〜

今回のレポートでは、「給与・待遇面」が離職を検討する理由と、辞めない理由の双方でトップに挙がりました。これは、待遇の満足度が社員にとって極めて重要であり、給与が人材を引きつける大きな要因であることを示しています。

その上で、現職者と退職者のワードクラウドを比較すると、現職者の待遇面・会社経営への「不安・不満」に関する声が、退職者では会社組織や人間関係への「不信」に関する声が見られました。不安・不満の段階で“リアルな声”に目を向けることは、組織課題の発見や、離職防止のヒントを得る上で非常に重要です。

待遇面への納得感を確保しつつ、社員の声に耳を傾け、働きがいやキャリア成長、組織風土・人間関係の良さといった、多様な「辞めない理由」を一つでも増やす努力をすることが、社員定着の鍵ではないでしょうか。


【対象データ】

・アンケート質問

「個人」のキャリア情報をオープンにするコミュニティサービス「OpenWorkキャリア」にて実施、2025/8/1〜8/5に回答した632人データを集計。

・現職社員の「退職検討理由」

OpenWork上の「退職検討理由」欄に現職ステータスのユーザーから投稿されたクチコミ119,120件を集計。

・ワードクラウド

2022年以降にOpenWorkに投稿された会社評価レポートを対象。「経営者への提言」の投稿で使用された、頻出度合いが高い単語を大きい文字で出力したもの。現職者回答数:119,120件・退職者回答数:175,111件。色は視認性向上のためのものです。

働きがい研究所

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