5年間で月平均残業が10時間減少。建設業界の働き方レポート(vol.139)

「2024年問題」から1年半。改善が進む一方「新たな課題」も浮き彫りに

要旨:

  • 直近5年間で業界全体の月の残業時間は約10時間減少、有給休暇消化率は約1.3倍に
  • 急速な改革と同時に、「サービス残業の発生」や「部署・役職間における負担格差」など新たな課題も
  • 人手不足対策をかねたベースアップにより「待遇面の満足度」、手がけた仕事が地図に残る実感などにより「社員の士気」などが他業界の平均評価スコアを上回る
  • 「3K(きつい・汚い・危険)」というイメージから「新3K(給与・休暇・希望)」へ、変化の期待が高まる結果に

社会インフラの担い手として、長らく長時間労働が常態化してきた建設業界。2024年4月から同業界にも労働基準法の改正による時間外労働の罰則付き上限規制(※)が適用され、各社は労働環境の見直しを迫られてきました。制度適用から1年半が経ちましたが、働く現場はどう変わったのでしょうか?OpenWorkに寄せられた会社評価レポートをもとに、建設業界の最新状況を明らかにします。

(※)残業は原則月45時間・年360時間、労使合意があっても年720時間が上限


5年間で月間残業時間は約10時間減少。急ピッチで変革が進む

OpenWorkに寄せられた「建築・土木・設備工事」業界(以降「建設業界」)の月平均残業時間と有給休暇消化率の推移を確認すると、この5年間で残業時間は約10時間減少し、有給休暇消化率は約1.3倍に向上しました。全業界平均では、同期間の残業時間減少幅は約1時間、有給休暇消化率の増加幅は約1.1倍に留まっており、建設業界は他業界と比較して働きやすさに対する変革が急ピッチで進んでいることが確認できます。2025年における残業時間は約30時間と、未だ全業界平均(約23時間)と比較して長いものの、その差は縮まりつつあります。


1. 実際のクチコミから見える変化の兆し

実際に業界で働く人々からも、働き方の変化を実感する声が多く寄せられています。「現場による」「部署による」という前置きはあるものの、フレックス制度や男性の育休取得なども含め、働き方にポジティブな変化を実感している人が多いようです。


建設業界で働く人がOpenWorkに投稿した、働き方の変化を表すクチコミ

時間外労働規制が2024年から適用され、以前と比べて帰宅時間は早く業務の分散も進んでいると思われる。外勤はなかなかギリギリの状態でやっている現場もあるようだが、振替休日などを適宜取得しているケースが以前と比較して圧倒的に増えたと感じる(設計、2025年1月投稿)
在宅勤務、フレックス勤務の制度も整備され、長時間労働を強要する雰囲気も改善されてきており終電まで働く、と言う事はほぼ無くなった。ここ数年で働きやすさは相当良くなっていると思う(設計、2025年4月投稿)
現場によりますが、最近では早番・遅番制や代休取得促進など 残業時間を減らす取り組みが行われています。徐々にではありますが、働きやすい環境になってきているのではないかと思います(施工管理、2025年7月投稿)
部署にもよるが有休なども積極的に取得が推奨されていて、フレックスなどの制度も一般的に活用されている。育休なども取得しやすい(企画、2025年9月投稿)


2. 浮き彫りとなった新たな課題

一方で、急速な変革の代償として「サービス残業の発生」や「部署・役職間における負担格差」「企業・個人間での意識差」を指摘する声も散見されます。クチコミからは、「人手不足の中で残業削減を求められる一方、工期が伸びるわけではなく現場のどこかに必ず皺寄せがくる」など切実な声も確認できました。現在はまさに改革の過渡期であり、個々の企業努力や意識改革でできることには限界があります。発注者から協力会社までが多層的に繋がる業界全体で適正な工期のあり方や技術の導入を含め、働き方の改善を共に考え続けていくことこそが、真の課題解決への鍵となりそうです。


建設業界で働く人がOpenWorkに投稿した、今後の課題感を表すクチコミ

毎月60時間は残業するが36協定の関係上、月の残業時間は45時間に抑える必要があり、月15時間はサービス残業となる。(施工管理、2025年7月投稿)
残業時間について、主任以下の非管理職は45時間/月の徹底はしっかりとしているが、その反面課長代理以上の管理職は何時間働いても問題ない(働くしかない)という実情があり、100時間を超える残業が何ヶ月続いていても問題視されない。(施工管理、2024年12月投稿)
内勤と外勤だと大きく労働環境が異なる。労働基準法の改正がされたが外勤は相変わらず長時間労働が多い。また休日労働も結構ある。内勤部門は部門にもよるが、そこまで残業は多くない。(技術、2024年12月投稿)
残業時間が多く、職人さんと話すのに疲れてしまった。自社内の働き方を変える意識は大きく変わってきていると思うが、一緒に工事を進めていく職人さんたちの意識はまだまだ昔のままで、私はそこに合わせていくことが難しく感じた。(施工管理、2024年12月投稿)


働きやすさの向上にともなって、他のスコアも改善傾向

最後に、建設業界の職場環境に関する評価から強みや特徴を探ります。下記は2025年の全業界と建設業界の平均スコアを比較したグラフです。


建設業界の平均スコアは、全業界平均と比較して「総合評価」、「風通しの良さ」、「社員の相互尊重」、「法令順守意識」、「人事評価の適正感」が低い傾向にありました。これは、安全確保を最優先とする現場でのトップダウン文化や、大規模プロジェクトゆえに個人の成果が見えにくい傾向、現場で長く勤務している社員を高く評価する年功序列的な文化など、業界特有の構造が影響していると推察されます。

一方、「待遇面の満足度」、「社員の士気」、「20代成長環境」、「人材の長期育成」については全業界平均を上回るスコアを獲得しており、業界の強みと言えそうです。建設業界では人手不足への対応策として積極的なベースアップを実施しており(※1)、自身が関わった仕事が形に残り社会を支えているという実感を持ちやすい点と相まって、待遇面の満足度や社員の士気を引き上げていると推測されます。また、若手のうちから数億円規模の現場に携わり多様な関係者を取りまとめる経験を積めることに加え、資格取得支援や研修制度など人材投資に積極的な企業が多い傾向(※2)が、20代の成長環境や人材の長期育成への評価につながっていると考えられます。

(※1)東京商工リサーチ「中小企業の賃上げ率「6%以上」は9.1% 2025年度の「賃上げ」 は企業の85%が予定」

(※2)オープンワーク働きがい研究所「ゼネコン大手5社の働き方レポート」


特筆すべきは、全業界平均より低い傾向の項目を含めた多くの項目が、2023年から2025年にかけて上昇傾向にある点です。「2024年問題」を契機とした各社の取り組みは、単なる「労働時間の削減」に留まらず、社員の士気向上や長期的なキャリア形成への期待感など幅広い側面に好影響を与えていると考えられます。

建設業界では、2024年時点で55歳以上の高齢人材が全体の約37%を占める一方、29歳以下の若手はわずか約12%に留まる(※1)など、深刻な高齢化と人手不足に直面しています。現場業務を長らく支えてきた高卒人材を含む若手の採用難や離職率の高さ、それらに関連した倒産件数の増加(※2)など、克服すべき課題は依然として山積しています。

しかし、今回の調査で見えてきたのは、「建設業界は今、最もダイナミックに変化している業界である」というポジティブな側面です。一つひとつの建物や工事が完成した際の達成感、地図に残る仕事で社会を支えるという社会貢献性の高さ。これらは、建設業界が持つ唯一無二の魅力であり、かつての「3K(きつい・汚い・危険)」というイメージは、各種技術の導入や働き方改革の浸透により、「新3K(給与・休暇・希望)」(※3)へと着実に変わりつつあるのではないでしょうか。

(※1)国土交通省「最近の建設産業行政について」

(※2)東京商工リサーチ「建設業の倒産 過去10年間で最多 資材高、人手不足に「2024年問題」が追い打ち」

(※3)国土交通省の提唱する、建設業界の目指す新しい職場環境のあり方


【対象データ】

・「建設業界の月平均残業時間・有給休暇消化率推移」および「建設業界におけるスコア推移」: OpenWorkに2020年1月1日〜2025年9月30日に投稿された現職社員による投稿をもとに集計。集計対象とした投稿数は、建設業界が7,726件、全業界は331,786件。

・「全業界と建設業界の平均スコア比較(2025)」:OpenWorkに2025年1月1日~9月30日に投稿された現職社員による投稿をもとに集計。集計対象とした投稿数は、建設業界が1,121件、全業界は49,449件。

働きがい研究所

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