要旨:
- 残業時間が退職に影響。退職者のほうが現職者より月間残業時間が6時間長い
- 有休取得率では、退職者と現職者にそれほど差は見られない
- 社員から「法令順守意識」が低いと思われていることは離職率を高める要因となる
- 退職者が選ぶ「辞めたけど良い会社ランキング」の第1位はグーグル株式会社
今回は、「Vorkers(現:OpenWork)」に投稿された5万6999件の社員による在籍企業評価の回答データを対象に、退職要因に関する調査として、現職者(25,840人)と退職者(31,159人)の差異等について集計、分析を行いました。
有効求人倍率が22年ぶりの高水準を保っている昨今、企業にとっては人材を確保することがより難しい状況となっています。人材確保のためには、まず優秀な人材の流出を防ぐことが不可欠です。企業で働き続ける現職者と、退職者を分ける道は何か。今回の調査を通じて、退職要因への洞察を深めることで、社員の流出を防ぐ働きやすい環境が整っていくことを願っています。
“退職要因”に関する調査レポートの第2弾として、「Vorkers(現:OpenWork)」に投稿されたクチコミの「退職理由のテキストマイニング結果」を10月末に公開予定です。
残業時間の現職者・退職者比較
月平均残業時間は、退職者のほうが現職者より6時間長い
月平均残業時間を見ると、現職者が45時間に対し、退職者は51時間と6時間の差が生じています。さらに月間残業時間別の構成比を見ると、「150時間以上」では、現職者36.18%に対して退職者は63.82%、「100~150時間未満」では、現職者39.63%、退職者60.37%と、残業時間が長くなるほど退職者の割合が高くなる傾向にあります。これらから残業時間が長くなると社員の退職に影響することが推測できます。
有休取得率には差異なし
一方、「有休取得率」は現職者42%、退職者41%と、ほとんど差異はないことがわかりました。退職理由についてのクチコミの中にも、「有休がとれない」ということだけを理由としたものはほとんど見られませんでした。有休取得率は退職理由としてはそれほど大きなものではないと言えます。
働きがい評価項目の現職者・退職者比較
社員から「法令順守意識」が低いと思われていることは離職率を高める要因となる
社員が在籍企業の働きがいを8項目で評価したVorkers(現:OpenWork)の回答データを集計し、現職者と退職者の平均値で比較すると「法令順守意識」で最も大きな差異が確認できました。企業にとっては、社員から「法令順守意識」が低いと思われることが、離職率を高める要因になっていると考えられます。
退職者が選ぶ「辞めたけど良い会社ランキング」
元勤め先として評価の高い企業トップはグーグル。
集計対象を退職者に絞り、Vorkers(現:OpenWork)の働きがい評価項目の総合点から評価の高い企業ランキングを作成しました。こちらのランキングは、様々な理由により退職を選択した元社員から「在籍して良かった」と感じられている企業と言えます。ランキング1位となったのはグーグル株式会社です。続いて、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社、旭化成株式会社となっています。それぞれの企業の退職者コメントを見てみます。
1位のグーグル株式会社では、「チームワークを大切にすることで、個人だけでなく、チーム、部署、会社としてのパフォーマンスを上げることが出来た」「グローバル化が進む中で成長の機会をたくさん提供してくれる会社だと思いました」「スピードとボリュームをこなし、周りの優秀な人々の間で切磋琢磨できているという意味では、現在の経験は今後も活かせると思う」など、グローバル企業ゆえの仕事内容や取り組み方、周りの社員からの刺激があることがうかがえます。
2位のプロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社では、「現在、コンサルタントとして、産学連携、日本語・英語、大・中小企業と幅広く活躍する原動力となっている」「証券アナリスト、事業会社での経営企画、コンサルタントなど様々な分野で活かすことができる能力であると思うので、今後のキャリアの選択肢は非常に豊富であると感じています」「自分の強みを理解し、世の中的に、これができると胸を張って言えるレベルの実績と自信を持つことができた。転職した際にも、大きく役に立った」など、在籍時の仕事が、新たなキャリアを築く為の土台となっているようです。
3位の旭化成株式会社では、「大手企業であるため、組織のマネジメント の仕方や営業実績のコントロールといった一連のプロセスは非常にしっかり時間をかけて頭に入れることができる」「キャリア開発についてはすごく積極的な会社であることは間違いない」「若いうちからさまざまな仕事を任される。失敗してもトライさせる社風がある。私も多くの失敗をしたが、貴重な経験を積ませていただいたと思う」など、仕事自体の取り組み方を身につけられ、若くてもチャレンジできる環境があることがわかります。
※ランキングの評価点・クチコミ件数などは投稿によって変動するため、「Vorkers(現:OpenWork)」各企業ページで掲載している数値と異なる場合があります。
データの集計について
データの収集方法
「Vorkers(現:OpenWork)」の会社評価レポートへの回答を通じてデータを収集しています。
会社評価レポートの回答条件は下記のとおりです。
- 社員として1年以上在籍した企業の情報であること
- 500文字以上の自由記述項目と、8つの選択項目に回答いただくこと
8つの選択項目は、下記内容に対する5段階評価となります。
- 待遇面の満足度(待遇面全般についての満足度)
- 社員の士気(仕事に対する社内の士気について)
- 風通しの良さ(社内の風通しについて自由に意見が言えたか)
- 社員の相互尊重(社員同士がお互いを尊重し合う、チームワーク意識について)
- 20代成長環境(20代が鍛えられる、成長できる就業環境について)
- 人材の長期育成(採用した人材を30代、40代、50代と長期に育成してゆく方針について)
- 人事評価の適正感(実力のある社員が適正に評価され昇進しているか)
- 法令順守意識(社内の法令順守意識について)
対象データ
2007年7月~2014年9月に社員・元社員から投稿されたレポート回答(全56,999件)を対象データとしています。
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