30歳時点で男女の年収差額が少ない企業ランキング(vol.104)

男女差額の少なさは「実力主義」「勤続のしやすさ」がポイント


要旨:

  • ランキング1位は男女の年収差額1万円、ジョブ型雇用のパイオニア企業である「キヤノン」と実力主義の組織体制がうかがえる「ベルパーク」という結果に
  • 男女の年収差額の少なさに繋がる「勤続のしやすさ」は、専門性と勤務時間が鍵
  • 専門性を持って働ける、製薬・医療関連企業や官公庁が多数ランクイン
  • 勤務時間の調整がしやすい、アパレル・小売、航空関連企業も多数ランクイン

2023年3月期決算から、いよいよ上場企業を対象に有価証券報告書内での人的資本の情報開示が義務付けられます。日本の多くの企業は3月期決算を機に初めて開示することになり、まさに日本の人的資本経営の“実現”に向けた第一歩と言えそうです。数ある人的資本の指標の中でも、世界経済フォーラムが発表した「ジェンダーギャップ指数2022」においても先進国の中で最低レベル(※)である日本では、とりわけ「男女賃金格差」項目への関心は高く、経営者においては喫緊の課題ではないでしょうか。


今回の調査レポートでは、OpenWorkに投稿された男性回答者と女性回答者の「30歳時点」の推定年収データをもとに、男女間の年収差額が少なかった企業をランキングにしました。OpenWorkに寄せられた、ランクイン企業で実際に働く社員の声も併せてご紹介します。

(※)男女共同参画局「共同参画2022年8月号」


30歳時点で男女の年収差額が少ない企業ランキング

男女差ほぼ無し、1位はキヤノンとベルパーク。実力成果主義が背景か

30歳時点の男女の年収で差額を分析した今回の調査レポート。ほぼ差がないレベルと言える、差額1万円だったのはカメラ・複合機の大手メーカー・キヤノン、そして携帯電話販売代理店のベルパークという結果となりました。キヤノンは2005年ごろからいち早く役割給制度、いわゆる「ジョブ型」の給与体系に切り替えており、男女間での年収差が生まれにくい要因と言えそうです。実際の社員クチコミでも「昇給は年1回の昇級試験次第」「男女関係なく実力主義」という声が上がりました。


「G2等級からG3等級は、社内の試験に合格すれば、数年で昇格できる。ここで、年収が一段変わる。(開発、男性、キヤノン)」


「開発部門では女性社員が少ないものの、仕事内容や待遇で男性社員と差が出ることはない。出世に関しては、男女比率から考えると、女性の管理職も少なくないと思われる。(開発、女性、キヤノン)」


一方、ベルパークも「資格試験に合格したら給与が大幅にあがる」「実力・実績主義」といった様子がクチコミからうかがえ、男女関係なく成果を出せば給与に反映されることが差額の少なさにつながりました。


「体育会系で実力、実績主義。常に気持ちを高く持ち続け利益を追う(実績を出す)、チャレンジすることをいとわない。若くても実力があればステップアップでき、基本給・年収を上げることができる。(店長、女性、ベルパーク)」


「評価制度も他の上場企業に比べて設計が細かく、一般的なMBOよりも細かい指標が組まれている。成果評価も完全にデジタルで個人の成果が適切に反映され、やりがいがある。一般的に言う上司のお気に入り評価が一切入り込まない仕組みになって所が良いと感じる。(販売、男性、ベルパーク)」


勤続しやすさ、その鍵は「専門性の高さ」「労働時間の調整のしやすさ」にあり

30歳時点の年収の男女差が少ない要因としては大きく2つのポイントが挙げられます。


1.製薬・医療系企業、官公庁が数多くランクインし、専門性が高い職種を多く持つ企業や、企業の業種自体に専門性がある。

2.アパレルや小売、航空関連といった現場・現業系企業も多くランクインし、シフト勤務などにより労働時間を調整しやすい。


まとめると「専門性の高さ」「労働時間の調整のしやすさ」が勤続しやすい状態をつくり、結果として「男女差額の少なさ」につながっていると言えそうです。


「男性しかできない仕事、女性しかできない仕事はなく、一人の人間として扱われている感覚があります。(調査、女性、国税庁)」


「専門性の高い仕事であるため、常に勉強することがある一方、激務ではないので、女性が私生活を充実させながらキャリアを積んで行きやすいと思います。(調査官、女性、裁判所)」


「女の人も結構いるので働きづらくはないと思います。パートもできる仕事はたくさんあるので時間の融通を聞かせてシフト調整すれば大いに働けます。(主任、男性、朝日新聞社)」


「シフト制の為繁忙期以外は希望の休みは取りやすい方だと思う。有給休暇も取りやすいので閑散期にはまとめて休暇をとることもでき、プライベートは充実させられると思う。(店長、男性、ITXジャパン)」


「残業もない為ほぼ時間通りに帰社でき、プライベートな時間はしっかり取ることができる。また、有給もしっかり消化させてもらえらる為、自分の時間を持てやすい。(販売、女性、ヘネス・アンド・マウリッツ・ジャパン(H&M))」


データの集計について

OpenWorkに投稿された正社員による会社評価レポートのうち、一定数の年収データをもつ2,184社、182,411人を対象データとしています。また、年収データは平均値ではなく、最新性、回答者数、乖離性をポイントとした独自のアルゴリズムで各企業の男女別の30歳時の推定年収を算出し、男女の差の絶対値が小さい順でランキングを作成しました。

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